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◆2003年6月◆
層雲峡では・・・

 6月に入りいよいよ高山植物の季節となりました。麓の層雲峡はすっかり新緑におおわれていますが、黒岳の登山道はいまだほとんど雪の下です。6月3日現在では、山頂部の風衝地でうウラシマツツジとコメツガザクラが開花を始めています。積雪状態もところによって変化があり、九合目の標柱はすっかり路面まで露出しているのに、八合目の標柱は本日やっと頭を出したばっかりです。全体としては例年並の積雪でしょうか。


〜多彩な高山植物群落〜

 高山植物とは、一般的には森林限界を超えたハイマツ帯に生息する植物を呼んでいます。前号では標高によって植生が変化していく垂直分布を紹介しましたが、ほとんど同じ標高に分布しているにもかかわらず、高山植物群落は実に多彩です。一見モザイク状に分布しているように見えますが、その分布は立地の風衝、積雪、微地形などと深く関連しており、全体的には高山風衝地群落→ハイマツ群落→高山雪田群落、あるいは高山雪潤草原へと移行しています。そして冬期の積雪も同方向に増加しています。

高山風衝地群落
高山帯のなかでも気候状態がもっとも厳しいところで、冬期にも積雪が少なく、地面が露出するところが多い。多くは地下に永久凍土が発達している。コメバツガザクラ、ミネズオウ、ウラシマツツジ、エゾオヤマノエンドウ、コマクサ、タカネスミレなど。

ハイマツ群落
ハイマツ群落は冬期には積雪に覆われている。風上側斜面では上部の積雪の少ないところではハイマツ群落の丈は低く、下部の積雪の多いところでは丈は高くなる。ハイマツ群落の風下側にはウラジロナナカマド群落がよく発達し、コケモモやイソツツジなどが見られる。

高山雪田群落
風下側の積雪の豊かな立地に発達し、残雪は夏期遅くまで残る。エゾツガザクラ、チングルマ、キバナシャクナゲ、アオノツガザクラ、エゾコザクラ、イワイチョウなど比較的に大きな群落が発達する。

高山雪潤草原
風下側の積雪の豊かで夏期には比較的に雪解けの早い立地に発達する。高茎草本類のお花畑で、多くは雪崩の発生しやすい急斜面に群落を形成するが、五色ヶ原のような平坦地にも広大な群落が発達する。チシマキンバイソウ、ハクサンイチゲ、ナガバキタアザミ、ミヤマキンポウゲなど。


〜大雪山から発見された タカネセスジアカネガネオサムシ〜

ウスバキチュウは大雪山の高山帯にのみに生息する代表的な氷期の落とし子ですが、最近、高山帯のパルサ湿原において、ウスバキチョウに匹敵する貴重な昆虫が発見され、国内外の研究者に驚きを与えています。発見された昆虫は甲虫類のオサムシの仲間で、セスジアカガネオサムシ(体長約20mm)の一種です。

 セスジアカガネオサムシ Homoeocarabus maeander は、北東ユーラシアから北米にかけて亜寒帯地域を中心に分布する好湿性の種です。これまで世界で4亜種に分けられており、基亜種 maeander はシベリアから北米大陸にかけて広く分布し、lapilayi はカナダ東部のニューファンドランド島に、paludisはカムチャッカから北海道の平地部の釧路湿原やサロベツ原野などに、そして chejuensis は韓国の済州島の高山の湿原に孤立分布しています。

 パルサ湿原で発見されたカタネセスジアカガネオサムシは上記4種とは形態的にも明らかに異なっており、新亜種 nobukii (学名は発見者の層雲峡ビジターセンター長、保田信紀に因む)として記載されました。おそらく氷期以降の比較的に長い年月を、他集団とは遺伝的交流を絶たれた状態で過ごしてきたことは疑いなく、北海道への侵入経路や年代も、道内の低湿地に分布している集団とは異なるかもしれません。

 なおパルサ湿原は、永久凍土地帯に分布する周氷河地帯のひとつであるパルサ(泥炭質の永久凍土丘)を伴っていることできわめて特異であり、日本唯一の分布地です。



■赤岳■

 銀泉台から赤岳へは「花の赤岳」とも言われる人気の高いコースです。第一花園・第二花園・奥の平・コマクサ平・・・次々にスポットが現れ、順々に高度を上げていくので、第三雪渓の急登がややキツイものの、比較的にペースもとりやすく、登りやすいコースではないでしょうか。

 7/17頃は、第二花園は、まだほとんど雪渓に覆われていて、年によってはそれ以外でも登山道上に雪渓がいくつも残り、ぬかるみや滑りやすい場所も多い可能性もありますので、足元(靴・スパッツ)の装備・防水はしっかりとしてお越しください。

 この頃コマクサ平では、コマクサの花が見頃を迎え、ひょっとするとウスバキチョウに出会えるかもしれません。キバナシャクナゲ・エゾコザクラ・チングルマ・エゾノツガザクラ・・・雪渓のとけたあとからあとから、様々な高山植物の咲き乱れる季節です。赤岳から少し小泉岳方面へ足を延ばせば、大雪山の国有種であるホソバウルップソウの花も咲き終わりに近いかもしれませんが、見ることが出来るかもしれません。

 コマクサ平で高山蝶の観察・足元に広がる高山植物との出会いを楽しんで下さい。



■沼の原■

 大雪山の奥座敷とも呼ばれる沼の原は、高層湿原です。

 高層湿原とは、「高山にある湿原」と言う意味ではなく、地表で枯死したミズゴケ泥炭が 堆積して形成されるもので、今講座では「森林地-低層湿原-中間湿原-高層湿原」といった湿原の形成過程や、ナガバモウセンゴケ・ミツガシワ・ルリイトトンボ・ルリボシヤンマ・カオジロトンボ等、湿原特有の動植物を観察。

 ルートは、登山口から沼の原まで樹林帯で急登が続きます。上り下りとも両手を使うこともしばしばですので、軍手等のご用意も忘れずに。樹林帯の足元には、エゾノレイジンソウ・ゴザンタチバナ・マイヅルソウ、沼の原ではコツマトリソウ・ツルコケモモ・ミヤマリンドウ・ホソバノキソチドリ等が見られる季節です。





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