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荒涼とした高山帯の砂礫地帯にミネズオウやイワウメなどの高山植物が咲き始めると、どこからか地の底から湧き出る水のように淡黄色の透きとおる羽をもつウスバキチョウが現れてきます。
大雪山にはウスバキチョウをはじめアサヒヒョウモン、カラフトルリシジミ、ダイセツタカネヒカゲなど天然記念物に指定された4種の高山蝶が生息していますが、これらの高山蝶は本州の高山には分布していません。しかし不思議なことに海を渡ったシベリア大陸や北陸大陸にはその共通種が分布しているのです。この事実は北海道の自然がいかに大陸と深く関連されていたかを物語っています。
過去の氷河期には海水面が低下していたため北海道は陸橋によって大陸とつながっていました。
そのためオオツノシカやナウマンゾウなど多くの生物は大陸から渡来していたと考えられます。しかし地球が温暖化に向かったとき、まず北海道は津軽海峡によって本州と分離されましたが(最終ウルム氷期にも分離されていたといわれる)、比較的浅い海峡をもつ宗谷海峡や間宮海峡は、なおしばらくは陸橋として存続しており、その陸橋を通して、大陸〜サハリン〜北海道と生命の交流が続いていたものと考えられます。
やがて、さらに温暖化が進み、北海道が現在のように大陸と完全に分離された島になってしまうと、北方へと帰ることができなくなった多くの寒地性の生物は溶けていく氷を追うように寒冷な気候条件を求めて高山へ高山へと登りつめていきました。
『氷河期の落とし子』と呼ばれるウスバキチョウは、このような道を辿ってきたのでしょう。
大雪山の高山帯にのみ分布するウスバキチョウはこのような長い地史的背景を生い立ちにもっています。成虫は6月中旬から8月上旬まで見られます。晴天無風の日と好んで活動し、ミネズオウやイワウメなどの花によく吸蜜に訪れます。しかし強風の日や太陽が雲に隠れて気温が下がりますと、ハイマツなどの中に姿を隠してしまいます。母蝶はコマクサ近くの石下にひとつずつ卵を産んでいきます。卵はそのままの状態で冬を越し、翌年にはふ化します。幼虫はコマクサのみを食草として成長し、8月には薄いまゆを作ってその中で蛹となり、2度目の冬を越します。そして3年目、やっと蝶になって現れてくるのです。
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